尾高忠明指揮、NHK交響楽団のコンサートに行ってきました。
ホールは、サントリーホールでした。
今シーズン最後のサントリー定期でした。
来年も同じ席を継続するので、最後といっても感慨は全くありません。
プログラムは
チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番(ソロ 小山実稚恵)
ラフマニノフ 交響曲第1番
アンコールは、ピアノソロでチャイコフスキーの四季から「舟歌」でした。
チャイコフスキーの冒頭、やっぱN響たっぷりとした響きで良い音してるなぁ、と思いました。
ホールの特性の手助けもあるかもしれませんがとってもいい響きでした。
金管の素晴らしい響きで始まったチャイコフスキーのピアノコンチェルト、小山さんのソロも申し分のない力強さと感情を込めた響きで応えます。
ただ、直ぐに思ったのは、破綻のない演奏だなぁ、でした。
決して文句じゃなく、不満じゃありません。
特にオケは尾高さんの棒に導かれてスコア通り、スコアから寸分たりとも外れない演奏です。
そして、突出することなく、控えすぎることなく、ピアノの脇を最初から最後まで同じ距離感を保ちながらピッタリと隣りを歩きます。
決して競奏ではありませんがだからと言ってサポートとも感じられす、包み込むような演奏でもありません。
ピアノがスコア通りに弾いいて、オケもスコア通りに演奏する、テンポもずらさず、感情も移入しないからズレようがなく、淡々とに近い形で音楽が進行してゆきます。
でも、決して悪い演奏ではありません。
このやり方でプロが演奏すれば、間違っても破綻はしないし、凡演にもなりようがない、模範的な演奏だったと思います。
それが尾高さんの個性なのかもしれませんが、個性が全く感じられません。
人間味とか、暖かさとか、危うさとか、刺激とか、それを音楽見求めているわけではないのですが、あまりにも模範的すぎて一定のレベルを下回らない代わりに、一定のレベル以上には絶対に行きません。
確かにその一定のレベルは高い水準ではあるのですが、そこを突き抜けるものがなにか欲しいと物足りなさを感じます。
標準的で、模範的で、お手本の典型のような演奏が決して悪かろうはずはありませんが、面白みにかけたのも否めません。
面白みを求めるあまりハチャメチャな演奏になることもありますから、面白みが良いとは言い切れないのかもしれませんが、優等生だけでも飽きてしまいます。
音楽って、演奏って、難しいなぁと実感しました。
アンコールの「舟歌」。
オケの軛から解放されたからか、とてもチャーミングで可愛らしい演奏でした。
小山さんの素晴らしさが溢れるアンコールでした。
体と首を少し傾けてはにかむ姿は小山さんらしいとても微笑ましい姿でした。
休憩を挟んでラフマニノフ。
ラフマニノフの交響曲というと演奏回数は圧倒的に2番です。
そして最近は3番が演奏される機会も増えたのではないかと思います。
そんな中1番がプログラムに乗ることはほとんどないのではないでしょうか?
僕はラフマニノフの交響曲の中では2番があまり好きじゃないせいもあり1番が一番好きです。
一番好きと言っても3曲の中での比較であり積極的に聴く曲ではありません。
定期演奏会で演奏されなければ聴く機会はない曲の一つです。
尾高さん、コンチェルトから一転して、伸び伸びとした力感溢れるとてもいい演奏でした。
退屈することなく約45分間を過ごすことができました。
コンチェルトではソリストを尊重するあまりお互いに半歩ずつ引いていたのでしょうか?
超ベテランの御大の指揮者と日本を代表するソリストの共演ですからそんなこともないと思うんですけどね。
珍しい曲ならまだしも、ピノコンチェルトでは最もポピュラーなチャイコフスキーですし、コンサートも同じプログラムで今日が2日目ですし、遠慮も何もないと思うんですけどね・・。
ただ、かっちりと演奏するコンチェルトを聴きながら、尾高さんがイギリス音楽を得意とするのがわかるような気がしました。
やはりそこに、得手不得手、音楽の特性が現れているのかなぁと思いました。
抑制されたチャイコフスキーと吹っ切れたラフマニノフ、対比がとても興味深い今日のコンサートでした。