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Channel: Classic Concert diary
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マイケル・ティルソン・トーマス & サンフランシスコ響

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マイケル・ティルソン・トーマス指揮、サンフランシスコ交響楽団のコンサートに行ってきました。
ホールは、NHKホールでした。

NHK音楽祭の一矢です。
今年は4回シリーズですが、どの公演もプログラムに食指が動かず今年は1回だけです。
今夜の公演のプログラムも首を傾げながらでしたがチケット代金の安さに背中を押されて昨夜のサントリーホールでのマーラーではなく、今夜のブルックナーにしました。

昨年のNHK音楽祭以来約1年振りのNHKホール。
公演通りの変貌にビックリしました。
パルコ取り壊しも知っていましたし、渋谷区役所・渋谷公会堂の建て替えも知ってはいましたが実際に歩いてみると通りの両側フェンスだらけ。
ブルーのLEDで飾られた並木の華やかさとフェンスに覆われた荒廃感のコントラストが異様でした。
昼間ならもちょっと違った印象だったんだと思います。
公演通りがおしゃれな街並みとして人気が出始めたのが1970年代だと思います。
それから40年余り、色んなものがくたびれて一気に建て替えになったんですね。
時代を感じます。

坂を登りきってNHKの敷地に到着したら黒山の人だかり。
なんだろうと思ったらNHKホール前の明治神宮に続く並木道がブルーのLERで彩られ「青の洞門」と名付けられて多くの人が集まっていました。
誰もが足を止め写真を撮りたくなる見事なイルミネーションです。

プログラムは

ショパン   ピアノ協奏曲第2番(ソロ ユジャ・ワン)
ブルックナー 交響曲第7番

アンコールはピアノソロでシューベルト=リスト編「糸をつむぐグレートヒェン」でした。


出かける前に改めてプログラムを確認しての感想は「長いコンサートだなぁ」です。
チケットを購入するときはそこまで考えませんでしたが翌日が仕事ならちょっとうんざりする長さです。
でも思ったより終演は早くてホールを出たところで時計を見たら9時20分でした。
FMで生中継してますから時間は考慮されてるんですね。

サンフランシスコ響、結構早い時間から各奏者バラバラとステージに登場して勝手気ままに練習をしてます。
それぞれの奏者が勝手なフレーズを練習してますから、調性もリズムもテンポもバラバラ、騒音に近い音がホールを覆います。
整然と登場するオケもあれば、自由なオケもありますが、サンフランシスコ響はその中でも勝手気ままなオケだと思います。
人と一緒じゃないと不安になる日本人のオケはどこも一斉に整然と登場します。
これも国民性なんだと思います。

最初のショパン。
1stVn10型でコントラバスは3基のこじんまりとしたバックです。
ユジャ・ワンのピアノは相変わらず鮮やかでした。
一つ一つの音が濁ることなく一音一音が粒だって全ての音が個別にセパレートされて聴きとれます。
だからと言って音楽は流麗に流れショパンの抒情感もたっぷりでした。
相変わらず素晴らしい演奏です。
変わらず、今聴くべきピアニストの最たる一人だと思います。

休憩を挟んでブルックナー。
予想の範囲内の演奏で、僕は嫌いじゃありませんが批判も多い演奏だと思います。
これがブログやツイッターなら大炎上だと思います。
ブルックナー好きには決して許せない怨嗟に満ち八つ裂きにしてもまだ足りない演奏だったと思います。

とても解析的な演奏でした。
僕が大好きなSzellのブルックナーも重ねたスコアを上から見通したような演奏ですがそれともまた違った解きほぐされた演奏でした。
各パートの一つ一つの小節を音符単位にバラシてそれを改めて組み立てたものをスケルトンにして見せているようです。
ブルックナーというと教会での残響が語れますがそんなことは全く念頭にない近代的なホールの残響のままの演奏です。
各パートの有機的な絡み合いというよりも卓越したテクニシャン揃いの各パートがそれぞれに演奏を進めてゆきます。
サンフランシスコ響はオケの中でも各パートにテクニシャンが揃ったオケなのもその印象に拍車をかけたのかもしれません。

MTTの演奏の質の違いによってマーラーとブルックナーは全く違うんだなと実感させられます。
MTTはマーラーとブルックナーの解釈の違いが演奏の違いに現れていると思います。
マーラーはスコアをもっと一体的に演奏します。
それぞれのパートの絡み合い、重層感、様々な顔を見せながら音を紡いでゆきます。
どうしてブルックナーはこれほどバラバラに切り離して演奏するんだろうと不思議でした。

この解釈のブルックナー、好き嫌いは聴く人それぞれで大きく異なると思います。
僕にとってはとっても面白いブルックナーでした。
そしてサンフランシスコ響の各奏者の演奏水準の高さ、すべてのパートにソリストが沿ったような、オケの水準の高さに改めて舌を巻いたコンサートでした。

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